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地球温暖化の進行にともない、日本でも熱中症患者の増加が懸念されています。2025年の夏の気温も平年より高いことが見込まれており、熱中症対策は急ぎの対応を要する課題になっています。
とくに糖尿病のある人では、高温の曝露により、入院や死亡のリスクが上昇するという気になる調査結果が発表されています。
子供や高齢者も、熱中症の高リスク群とされており、対策の強化が求められています。
熱中症搬送者数の予測値を提供するサイトが、対象地域を全国47都道府県に拡大し、公開されています。
東京医科歯科大学の調査では、糖尿病ある人の高温環境への曝露が、糖尿病性ケトアシドーシス、高血糖高浸透圧症候群、低血糖といった深刻な病態による入院リスクと関連することが明らかになっています。研究成果は、「Environment International」に発表されました。糖尿病性ケトアシドーシスは、血糖値を下げるインスリンが不足し、十分に血糖値が下がらないことで起こります。脂肪分解が亢進し、ケトン体が増え、血液が酸性に傾いた状態(ケトアシド-シス)になり、高度の脱水になります。生命の危険をともなう合併症なので、早く気づき、速やかに治療をうけることが重要になります。また、高血糖高浸透圧症候群も、高血糖による急性合併症のひとつ。インスリンの相対的不足と極度の脱水により、著しい高血糖と脱水になり、意識障害を引き起こす場合もあります。
研究グループは、全国の2012~2019年の診断群分類(DPC)のデータと、気象庁の全国日平均気温データと統合し分析しました。
その結果、気温が29.9℃(99パーセンタイル)の場合、高血糖緊急症による入院リスクは1.64倍に、低血糖による入院リスクは1.65倍にそれぞれ上昇することなどが示されました。(いずれも、全国日平均気温の75パーセンタイルの気温(22.6℃)を基準としている)
「とくに、高血糖緊急症のリスクが高い、管理不良の糖尿病患者さんや、インスリンを使用しているなどHbA1cを低く管理している患者さんでは、高温環境による血糖への影響を事前に調べ共有し、医師と相談し薬剤を調整するなどの治療介入を積極的に行うことが、高血糖、低血糖による入院を予防するために有用である可能性があります」と、研究者は述べています。
熱中症は生命にかかわる病気だが、予防法を知っていれば防ぐことができます。体温を下げるためには、汗が皮膚表面で蒸発して身体から気化熱を奪うことができるように、しっかりと汗をかくことが重要で、そのために、汗で失った水分や塩分を適切に補給する必要があります。
とくに子供や高齢者は、熱中症の高リスク群とされており、対策の強化が求められています。大正製薬が20代~80代の700人を対象に行った調査では、高齢者は他年代に比べて熱中症対策の意識が高く、8割近くは室内でも熱中症対策を意識しており、夏場の水分補給についても9割近くは意識していることが分かりました。
一方で、熱中症による救急搬送人員は他年代に比べて高齢者がもっとも多く、高齢者は熱中症対策意識が高いにも関わらず、熱中症が頻発していることも示されました。「十分な水分量を補給できていると答えた高齢者のうち、実際には水分補給量が不足していた人は40%以上もいることが分かりました。この割合は高齢者が全年代のなかでもっとも高く、高齢者は水分補給量が足りていないことを自覚しにくいと考えられます」と、同社では述べています。